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資格手当の相場はいくら?厚労省データと工場の実額を元人事が公開

「資格を取ったら、いくら給料が増えるんだろう」
「工場の資格手当って、相場はどのくらいなんだろう」

先に、いちばん大事なことをお伝えします。厚生労働省の調査によると、資格を取っても「一切処遇には反映されない」と答えた企業が27.7%あります。

工場で働く中高年の作業者

4社に1社以上は、資格を取っても給料が1円も変わりません。この記事では、その現実も含めて正直に書きます。

私は40代後半で、まったくの異業種から工場派遣として製造業に入りました。その後、正社員に転籍し、総務人事として採用を担当し、いまは業務改善で現場管理者の指導をしています。専門は半導体と精密機械です。

この記事では公的な統計と、私が見てきた現場の実額を突き合わせます。統計だけでは実感が湧かず、現場の話だけでは一般性がないからです。現場の数字はあくまで一例として読んでください。

目次

厚労省データで見る資格手当の実態

まず公的なデータから見ていきます。厚生労働省が実施した「資格・検定等の人員配置、昇格及び賃金への反映状況等に係る実態調査」の結果です。

調査の概要

  • 実施:厚生労働省(委託先:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
  • 対象業種:建設業・製造業・小売サービス業の3業種
  • 対象:従業員30人以上の企業10,000社
  • 有効回答率:16.2%
  • 実施年度:令和元年度

資格・検定の取得者に対して、賃金などの処遇にどう反映しているか。結果は次のとおりです(複数回答)。

反映のしかた割合
月々の資格手当を支給41.0%
昇給の際に考慮23.6%
一時金の支給20.0%
基本給を決める際に考慮18.0%
一切処遇には反映されない27.7%

いちばん多いのが「月々の資格手当を支給」で41.0%。ただし、それでも半分に届きません。

そして注目してほしいのが、「資格・検定は一切処遇には反映されない」が27.7%という数字です。

資格を取れば必ず給料が上がる、というのは思い込みです。会社によっては1円も変わりません。

製造業は、実は反映されにくい業種です

この調査には、工場で働く人にとって見逃せない一文があります。

業種別にみると、「建設業」、「小売・サービス業」では、賃金等処遇に反映されやすい傾向が見られた。

お気づきでしょうか。調査対象は3業種なのに、製造業だけ名前が挙がっていません。

つまり製造業は、3業種のなかで資格が処遇に反映されにくい業種ということです。

ネットで「資格手当の相場は1万円台」といった数字を見かけることがありますが、あれは全産業の平均です。工場の話ではありません。

この調査は令和元年度に実施されたものです。数年前のデータである点はご承知おきください。ただし資格手当の制度が短期間で大きく変わることは考えにくく、傾向として参考になると考えています。

【現場視点】工場で実際についている額

ここからは、私が見てきた現場の話です。

私が見てきた範囲では、資格手当は1つあたり月2,000〜3,000円です。

年間に直すと2.4万〜3.6万円。正直、大きな額ではありません。

厚労省の調査が示す「製造業は反映されにくい」という傾向と、この実感は一致します。世間で言われる相場の数字を期待して工場に来ると、まず落胆します。

ただし、この額がすべての資格につくわけではありません。むしろ、つかない資格のほうが多いくらいです。ここが分かれ目になります。

会社が受講料を出して取らせている資格28種

私が見てきた現場で、会社が受講料を負担して取らせている資格を挙げます。一般的な「工場で役立つ資格10選」のような記事ではなく、実在する1社の全リストです。

ただし28種すべてに手当がつくわけではありません。どれに手当がつくのかも、あわせて書きます。

作業主任者・責任者系(手当あり。ただし保護具着用管理責任者は対象外)

  • 有機溶剤作業主任者
  • プレス機械作業主任者
  • 保護具着用管理責任者
  • 衛生管理者
  • 甲種防火管理者
  • 運行管理者
  • 職長教育

技能講習系(手当あり)

  • 玉掛け(技能講習)
  • クレーン等(技能講習)
  • フォークリフト運転技能講習

特別教育系(手当なし。受講料は会社負担)

  • クレーン等(特別教育・5t未満)
  • フォークリフト(特別教育)
  • 玉掛け(特別教育・1t未満)
  • 有機溶剤の特別教育
  • 粉じん作業特別教育
  • 自由研削砥石の取替等
  • 刈払機取扱作業者
  • 高圧・特別高圧電気取扱者
  • 局所排気装置等の自主検査者
  • 静電気防火教育(基礎)
  • 静電気防火教育(一般)

免許・社内資格系(手当あり)

  • 危険物取扱者乙種4類
  • 大型自動車免許
  • 整備士
  • 工程検査員(社内資格・等級あり)
  • 受入検査員(社内資格・等級あり)
  • 検査員(社内資格・目視検査。手当は月1万円)

意外に思われるかもしれませんが、いちばん手当が高いのは社内資格です。

目視検査を必要とする業務には、内部資格の検査員試験があります。これは手当が月1万円出ます。外部の資格の3倍から5倍です。

検査工程に配属されると、まず検査員試験のための教育があります。数か月以内に合格できないと、他部署へ配置転換になることもあります。工程検査員のほうは働くうえで必ず必要なもので、入社直後に教育とテストがあります。

外部の資格でいちばん高いのは第1種衛生管理者です。

有資格者は1〜2名いれば足りるのですが、転職されると事業所が困るので高く設定されています。人数が要らない資格ほど、抜けられたときの痛手が大きいということです。

ただし取得しても選任されなければ手当は出ません。ここがこの資格の難しいところです。

そして、ここが多くの方の想像と違うところだと思います。

特別教育は、受講料こそ会社が負担しますが、取得しても手当はつきません。保護具着用管理責任者も、手当の対象にはなっていません。

さらに、従事する業務に必要な資格のみが手当の対象になります。複数持っていても、それが全てもらえるわけではありません。

なぜ工場の資格手当は低いのか

採用と現場管理の両方を見てきた立場から、理由を3つ挙げます。

1. 取得のハードルが低いから

工場の資格の多くは、1〜3日の講習で取れます。 有機溶剤作業主任者は2日、クレーンの特別教育は1〜2日。試験で振り落とされることもほとんどありません。

会社から見れば「誰でも取れるもの」に高い手当は出しにくい。施工管理技士や宅建のように何百時間も勉強する資格とは、性格が違います。

2. 会社が費用を出しているから

工場の資格は、会社が受講料と勤務時間を負担して取らせるケースが多いです。法令で選任が義務づけられている資格は、いなければ操業できないからです。

本人が自腹で努力して取ったものではないので、手当も控えめになります。取得費用を会社が持っている時点で、実質的な還元は済んでいるという考え方です。

3. 持っている人が多いから

現場を回すために必要な資格は、結果的に多くの社員が持つことになります。 全員が持っているものに高い手当をつけると、単なる全体の賃上げになってしまう。

逆に言えば、人が持っていない資格ほど価値が出ます。 ここは後半でもう一度お話しします。

【要注意】手当がつかないケースもあります

期待して取ったのに何もなかった、という話は実際にあります。

手当がつかない・もらえない主なパターン

  • そもそも制度がない(厚労省調査で27.7%)
  • 対象資格のリストに入っていない。手当は会社が任意で決めるもので、法律の義務ではありません
  • 申請しないと支給されない。取っただけでは自動的につかない会社があります
  • 実際にその業務に就いていないと対象外。資格を持っていても配属先が違えば出ないことがあります

とくに3つめは、もったいない話です。修了証を取ったまま総務に提出していないという人が、実際にいます。

資格を取ったら、必ず総務か上司に修了証を提出してください。 「言わなくても人事は把握しているだろう」と思われがちですが、会社は本人からの申告で初めて知ることがほとんどです。

入社前に取った資格も同じです。履歴書に書いてあっても、手当の申請は別手続きという会社があります。入社時に一度確認しておくと確実です。

修了証を確認する事務担当者

【人事視点】手当より大きいのは昇給への反映です

私が見ているのは、その業務に必要な資格なのかどうかという点です。特別教育は手当がほとんどつかないので、技能講習まで持っている人とは差が出ます。

ただ、工場は入ってから資格取得をアピールできるところが、ほとんどありません。効いてくるのは入社時と、いまの配属先が合わなかったときです。希望の異動先の候補として、資格を持っている人が優先されるという形になります。

それと、手当はつきませんがQC検定はおすすめです。品質向上に取り組んでいると評価されますし、小集団活動で必ず役に立つので、取っておいて損はありません。

補足として、採用と評価に関わってきた立場から一般的な話をしておきます。

厚労省の調査でも、「昇給の際に考慮」が23.6%、「基本給を決める際に考慮」が18.0%ありました。月々の手当という目に見える形ではなくても、評価の材料としては確実に使われています。

そしてここが重要なのですが、昇給への反映は複利で効きます。 手当の2,000円は取った月から一定ですが、基本給が上がればその後ずっと積み上がっていきます。

手当の額より大事なこと

ここまで正直に書いてきたので、最後も正直に書きます。

月2,000円のために講習を受けるのは、割に合わないと感じる方が多いと思います。私もそう思います。

ただ、資格の本当の価値は手当ではありません。配置転換で困らなくなることです。

工場では、ライン変更や工程の統廃合で配置転換が起きます。中高年にとって、これが一番こわい。「その工程がなくなったら、自分の居場所もなくなる」という不安が常にあります。

このとき、資格を持っていると行き先が残ります。選任義務のある資格は、その工程を動かすために必ず誰かが必要だからです。

手当の2,000円ではなく、職の安定と、社内で動ける幅。これが本当の値打ちだと思っています。

そしてもうひとつ。転職するときには、資格そのものより「資格を取りに行く人だ」という事実が効きます。 年齢を重ねてから学ぶことをやめていない、という証拠になるからです。40代・50代の採用では、これが想像以上に大きい。

工場で手当がつく資格を、どの順番で取ると効率がいいか。それぞれの資格の中身は別の記事にまとめています。

有機溶剤作業主任者とは?半導体工場で乙4より効く理由を元人事が解説

天井クレーンの資格は5トンで分かれる|床上操作式クレーンを元人事が解説

資格を活かせる工場を探すなら、まず派遣会社選びからです。年齢で弾かれない会社の見分け方はこちらです。

【元人事が選ぶ】40代・50代向け工場派遣会社の選び方とおすすめ|年齢で損しない探し方

工場の製造ラインで働く人

まとめ

  • 厚労省調査では「月々の資格手当を支給」が41.0%で最多
  • ただし「一切処遇には反映されない」も27.7%。4社に1社以上は1円も変わりません
  • 製造業は3業種のなかで反映されにくい業種です
  • 私が見てきた範囲では、工場の資格手当は1つあたり月2,000〜3,000円
  • 取得ハードルが低く、会社が費用を出し、持っている人が多いことが理由です
  • 申請しないと支給されない会社があります。修了証は必ず提出してください
  • 手当より、昇給への反映と配置転換で困らなくなることのほうが値打ちがあります

出典:厚生労働省「令和元年度 資格・検定等の人員配置、昇格及び賃金への反映状況等に係る実態調査」(委託先:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)

資格手当を目当てに講習を受けるなら、正直あまり期待しないほうがいいです。それでも取る価値があるのは、給料ではなく居場所が増えるからです。 中高年が工場でやっていくうえで、そこが一番効いてきます。

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この記事を書いた人

40代後半で、まったくの異業種から工場派遣として製造業へ。その後、正社員に転籍し、総務人事として採用を担当。現在は業務改善で現場管理者の指導も行う。「派遣として働く側」「採用する側」「現場を回す側」の3つの視点から、工場の仕事と中高年のキャリアについて、きれいごとなしの本音を発信しています。専門は半導体・精密機械の現場。

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