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クレーンの特別教育とは?5トン未満の範囲と社内実施の落とし穴を解説

「うちの工場のクレーン、5トン未満だから資格はいらないよね?」
「特別教育って落ちることあるのかな」

先に結論をお伝えします。つり上げ荷重0.5トン以上5トン未満のクレーンを動かすには、クレーンの特別教育が必要です。 資格がいらないわけではありません。

工場のホイスト式天井クレーンを操作する作業者

そして、この特別教育には検索してもまず出てこない落とし穴があります。それは「受けたのに、証明するものが手元にない」という状態です。記事の後半でお話しします。

私は40代後半で、まったくの異業種から工場派遣として製造業に入りました。その後、正社員に転籍し、総務人事として採用を担当し、いまは業務改善で現場管理者の指導をしています。専門は半導体と精密機械です。

私自身はこの特別教育を受けていません。 ですので「受けてみた体験談」は書けません。そのかわり、社内で特別教育を実施する側と、応募者の資格を確認する採用側の両方を見てきました。

目次

何トンから特別教育が必要になるのか

まず線引きです。クレーン等安全規則第21条で、事業者は次の業務に労働者を就かせるとき、特別教育を行わなければならないと定められています。

つり上げ荷重必要なもの
0.5トン未満クレーン等安全規則の対象外(社内教育は推奨)
0.5トン以上5トン未満クレーンの運転の業務に係る特別教育
5トン以上技能講習または免許

つまり0.5トン以上5トン未満が特別教育の範囲です。「5トン未満だから何もいらない」は間違いで、0.5トンを超えていれば教育が要ります。

特別教育を受けずに0.5トン以上のクレーンを運転させると、事業者が労働安全衛生法違反になります。罰せられるのは運転した本人ではなく、就かせた会社です。

もし「うちは資格なしで動かしている」という現場にいるなら、上司に確認してみてください。会社を守る話でもあります。

5トン以上でも特別教育で足りるものがあります

例外がひとつあります。跨線テルハだけは、5トン以上でも特別教育の対象です。駅のホームなどで荷物を運ぶ設備で、工場ではまず見かけません。頭の隅に置いておく程度で十分です。

特別教育で動かせるもの・動かせないもの

ここを勘違いしている方が多いので、はっきり分けます。

動かせるもの(5トン未満)

  • ホイスト式天井クレーン
  • クラブトロリ式天井クレーン
  • 橋形クレーン
  • 壁クレーン、ジブクレーン
  • ケーブルクレーン、テルハ

動かせないもの

  • 移動式クレーン(トラッククレーン、ラフターなど)
  • デリック
  • 揚貨装置
  • 5トン以上のクレーン全般

とくに注意したいのが移動式クレーンです。法令上まったく別の装置として定義されているので、この修了証では操作できません。 名前が似ているので、求人票を見るときは気をつけてください。

逆に良い知らせもあります。床上操作式、無線操作式といった操作方式は問いません。 5トン未満であれば、どの操作方式でも動かせます。

ホイストなら資格はいらない、は半分正解

「うちはホイストだから大丈夫」という声をよく聞きます。これは半分だけ正しい。

荷を上げ下ろしするだけの装置なら、法令上のクレーンには当たりません。しかしレールに沿って水平に運べる構造なら、それはクレーンです。

判断に迷ったら、「荷を吊ったまま横に動かせるか」で見てください。動かせるならクレーンです。

特別教育と技能講習は何が違うのか

混同されやすい2つですが、性格がまったく違います。

特別教育技能講習
位置づけ教育資格
実施できる人事業者(社内可)・教習機関登録教習機関のみ
修了試験原則なしあり
修了証発行は法令義務ではない必ず交付される
時間13時間程度20時間程度

いちばん大きな違いは、特別教育が「資格」ではなく「教育」だという点です。この違いが、後半でお話しする落とし穴につながります。

落ちることはあるのか

これを心配して検索される方が多いので、はっきりお答えします。

特別教育に「不合格」という仕組みは、基本的にありません。

これは試験ではなく、危険な業務に就く前に必要な知識と技能を身につけさせるための教育だからです。決められた時間、決められた科目を受けきれば修了です。

実施機関によっては理解度を確認する簡単なテストを行うところもありますが、点数で振り落とすためのものではありません。分からなければその場で教え直します。

ですので、勉強してから行く必要はありません。 気をつけるのは一つだけで、居眠りや遅刻で規定の時間を満たさないと修了扱いになりません。 時間さえ守れば問題ありません。

学科9時間+実技4時間、1〜2日で終わります

内容は次のとおりです。

学科(9時間)…クレーンに関する知識/原動機と電気に関する知識/力学に関する知識/関係法令

実技(4時間)…クレーンの運転/運転のための合図

受講できるのは満18歳以上。学歴も実務経験も問われません。

費用は実施機関によって幅がありますが、1万円〜2万円が目安です。5トン以上の技能講習(3.3万〜4万円)と比べると、かなり安く済みます。

クレーン特別教育の受講風景

【要注意】社内で受けると、証明が残らないことがあります

ここが、この記事で一番お伝えしたいことです。

特別教育は、事業者が自分の会社で実施できます。 講師に資格要件はなく、その業務に十分な知識と経験がある社員なら務まります。外部に出す費用も時間もかからないので、社内実施はよくあることです。

問題はここからです。

特別教育の修了証は、発行が法令で義務づけられていません。

労働安全衛生規則第38条が求めているのは、受講者や科目の記録を作成して3年間保存することだけです。記録は会社に残りますが、本人の手元に何も渡らないケースがあります。

つまり、社内で特別教育を受けてクレーンを何年も動かしてきた人が、転職しようとしたときに「受けました」と口で言うしかないという状況が起こります。

しかも記録の保存義務は3年です。退職から時間が経つと、前の会社に問い合わせても記録が残っていない可能性があります。

いま社内で特別教育を受けている方、これから受ける方へ。

「修了証は発行されますか」と必ず聞いてください。 出ないと言われたら、受講記録の写しをもらえないか相談してみてください。実施日・科目・時間・講師名が入っていれば、証明として通用する可能性が高くなります。

ただし、これは会社によります。採用側として言うと、証明が出せない応募者には、もう一度受け直してもらう運用をしている会社もあります。受け直し自体は難しくありませんが、時間は取られます。

会社側にとっても記録は作成義務があるものなので、頼まれて困る話ではありません。在職中に頼むのが一番簡単です。

【現場視点】5トン未満のクレーンはどの工程にあるか

半導体・精密の現場では、5トン未満のクレーンやホイストは主に後工程の出荷工程で使われています。加工後の製品はロール状のものでも100kg未満で、梱包は2人作業で行うことが多いです。

一方、5トン以上の前工程は精密機器の原材料を扱います。1つ数千万円するものがほとんどで、搬入作業も特別な治具に装着する工程があります。正確に、丁寧に、傷をつけずにと細心の注意が必要です。

私が見てきた範囲では、特別教育は外部の教習機関に出しています。そして正直に言うと、特別教育に手当はつきません。インセンティブもありません。

それでも、出荷作業は実際に配属された人の定着率が高いんです。なぜか不人気で、おそらく重労働というイメージがあるのかもしれません。ただ最近は安全基準が高く、30kg以上は2人作業、腰痛ベルト、安全を保てる空間の確保など、作業者への配慮が行き届いています。

ひとつ言えるのは、特別教育は「入口として軽い」ということです。1〜2日、1万円台で終わり、年齢も学歴も問われません。

そして5トン未満のクレーンは、5トン以上より圧倒的に台数が多い。出番の多さで言えば、こちらのほうが日常的です。

【人事視点】特別教育は履歴書にどう書くか

資格取得を履歴書に書いた場合は、証明となるものの提示を必ず求めています。実務でも修了証の提示を求められることがあるので、講習実施機関のほとんどは発行していると思います。受講していても所持していない場合は、再度受講してもらいます。

ただ、ほとんどの応募者は持っていません。資格取得者が来るのは珍しいくらいです。

そして特別教育しか持っていない人と、技能講習まで持っている人では、昇給に差がつきます。

入社後は積極的に受講するようすすめていますし、受講料は会社が負担します。

補足として、採用担当をしていた立場から一般的な話をしておきます。

履歴書に書くときは、「クレーンの運転の業務に係る特別教育 修了」と正式名称で書くのが無難です。「天井クレーン資格」と書く方がいますが、法令にその名前の資格はありませんので、分かる人が見ると引っかかります。

そのうえで、つり上げ荷重の範囲を添えておくと親切です。「5トン未満」と一言あるだけで、配属を考える側は判断が早くなります。

やってはいけないのは、特別教育を「資格」や「免許」と書いてしまうことです。悪気がなくても、経験者が見れば分かります。

人事が警戒するのは、できないことをできると言う人です。正確に書いたほうが、はるかに印象が良くなります。

40代・50代にとっての位置づけ

特別教育は1〜2日で誰でも修了できます。ですので「これさえあれば転職で有利」と煽るつもりはありません。

ただ、採用の現場を見てきて言えることがあります。応募者のほとんどは、何も持っていません。だから持っているだけで、実は目立ちます。

そのうえで、入社後に会社が受講料を負担して受けさせてくれるケースも多い。いま自費で慌てて取る必要はありません。

では、いま受けておく意味はどこにあるのか。

特別教育の本当の使い道は、これから積み上げる資格の一段目です。

まず特別教育でクレーンに触れ、次に玉掛け、そして5トン以上の技能講習へ。一段ずつ上がるほど、任される工程が増えていきます。

中高年から工場に入る方にとって、いきなり3日・4万円の技能講習はハードルが高いと思います。まず1〜2日の特別教育から始めて、現場で使ってみてから次を考える。この順番のほうが現実的です。

そして忘れずに、修了証か受講記録を手元に残しておいてください。 それが次の一歩の土台になります。

5トン以上のクレーンまで動かせるようになると、配属先の選択肢がはっきり広がります。そちらは別の記事にまとめました。

天井クレーンの資格は5トンで分かれる|床上操作式クレーンを元人事が解説

クレーンを活かせる工場を探すなら、まず派遣会社選びからです。年齢で弾かれない会社の見分け方はこちらです。

【元人事が選ぶ】40代・50代向け工場派遣会社の選び方とおすすめ|年齢で損しない探し方

工場の出荷工程で梱包作業をする様子

クレーンの区分や教育時間は法令改正で変わる可能性があります。受講の前に、勤務先または受講先の最新の内容をご確認ください。

まとめ

  • 特別教育が必要なのはつり上げ荷重0.5トン以上5トン未満のクレーンです
  • 移動式クレーンとデリックは動かせません。法令上まったく別の装置です
  • 操作方式は問いません。床上操作式でも無線操作式でも運転できます
  • 学科9時間+実技4時間。費用は1万円〜2万円、1〜2日で終わります
  • 「不合格」の仕組みはありません。規定の時間を受けきれば修了です
  • 特別教育は「資格」ではなく「教育」。修了証の発行は法令義務ではありません
  • 社内実施だと証明が手元に残らないことがあります。必ず修了証か受講記録をもらってください

私自身はこの特別教育を受けていませんが、社内で実施する側と、応募者の資格を確認する側の両方を見てきました。1〜2日で受けられる軽さと、証明が残らない危うさ。この2つはセットです。 受けるときは、必ず紙で残してください。

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この記事を書いた人

40代後半で、まったくの異業種から工場派遣として製造業へ。その後、正社員に転籍し、総務人事として採用を担当。現在は業務改善で現場管理者の指導も行う。「派遣として働く側」「採用する側」「現場を回す側」の3つの視点から、工場の仕事と中高年のキャリアについて、きれいごとなしの本音を発信しています。専門は半導体・精密機械の現場。

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