玉掛け技能講習の費用と日数|クレーン資格で短縮できる仕組みを元人事が解説

「玉掛けって、何日かかるんだろう」
「クレーンの資格は持っているけど、また3日休まないとダメなのかな」

先に結論をお伝えします。通常は3日間・19時間ですが、クレーンの資格を持っていれば4時間免除され、2日間で終わります。

玉掛け作業

この記事では、告示の原文で免除の条件を確認したうえで、費用がいくら変わるのか、そして採用する側から見て玉掛けにどれだけ意味があるのかを書きます。

私は40代後半で、まったくの異業種から工場派遣として製造業に入りました。その後、正社員に転籍し、総務人事として採用を担当し、いまは業務改善で現場管理者の指導をしています。いま働いているのは、半導体や電子機器に使われるフィルムをつくる現場です。

私自身は玉掛けの資格を持っていません。ですので受講体験談は書けません。そのかわり、応募書類でこの資格を見てきた側と、現場で誰にどの作業をさせるか決める側の話はできます。この記事の後半はそちらです。

目次

まず「1トン」で分かれます

玉掛けの資格は2種類あって、境目は1トンです。

  • つり上げ荷重1トン以上のクレーン等での玉掛け … 技能講習(この記事の内容)
  • つり上げ荷重1トン未満 … 特別教育

ここで間違えやすいのが、1トンは「荷物の重さ」ではなく「クレーンのつり上げ荷重」だという点です。

500キロの荷物を吊るとしても、使うクレーンのつり上げ荷重が2トンなら技能講習が必要です。判定するのは荷ではなく設備のほうだと覚えておいてください。

そして工場に置いてあるクレーンは、たいてい1トンを超えています。実質的に技能講習のほうを取ることになります。

3日間・19時間。学科と実技の両方に試験があります

講習の中身は告示で決まっています。

区分科目時間
学科クレーン等に関する知識1時間
玉掛けに必要な力学に関する知識3時間
クレーン等の玉掛けの方法7時間
関係法令1時間
実技クレーン等の玉掛け(質量目測を含む)6時間
クレーン等の運転のための合図1時間
合計19時間

太字にした2つが、あとで説明する免除の対象です。

玉掛けが他の講習と決定的に違うのはここです。修了試験が学科と実技の2つあります。

有機溶剤作業主任者やクレーンの特別教育は座学だけですが、玉掛けは体を動かす試験に合格しないと修了証が出ません。実技には質量目測も入っています。持ち物に電卓を指定している機関があるのはそのためです。

実技当日の持ち物は、作業服・ヘルメット・安全靴・軍手・笛・電卓を指定している機関が多いです。笛は合図の試験で使います。受講案内を前日に読み返しておいてください。

実技は10人以内。だから枠が埋まります

告示にはこう書かれています。学科はおおむね100人以内、実技は10人以内を1単位として行う。

実技の定員が10人ということは、受け入れられる人数が構造的に少ないということです。有機溶剤のような座学だけの講習と比べて、玉掛けは申し込みが埋まりやすい。1か月から2か月先を見て動いてください。

【最重要】クレーン資格があると、4時間短くなります

ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。

玉掛け技能講習 免除による日数と費用の違い免除なしは19時間3日間、力学と合図が免除される場合は15時間2日間になることを示した比較図 クレーン資格があると4時間短くなる 免除されるのは「力学」3時間と「合図」1時間 免除なし 19時間 3日間 受講料 22,800円 力学と合図が免除 15時間 免除 2日間 受講料 19,980円 免除を受けられるのは 床上操作式クレーン運転技能講習の修了者 クレーン・デリック運転士免許を受けた者 ほか

免除されるのは「玉掛けに必要な力学に関する知識」3時間「運転のための合図」1時間。合わせて4時間です。

この4時間が抜けると、3日間の日程が2日間になります。休みが1日減って、受講料も下がります。

免除を受けられる資格

力学3時間+合図1時間が免除される人

  • クレーン・デリック運転士免許、移動式クレーン運転士免許、揚貨装置運転士免許を受けた者
  • 床上操作式クレーン運転技能講習または小型移動式クレーン運転技能講習を修了した者

工場でいちばん多いのは、2つめの床上操作式クレーンだと思います。天井クレーンを床から操作するタイプで、5トン以上を扱うなら必要になる資格です。

これを持っているなら、玉掛けは2日で取れます。先にクレーンを取っている方は、ぜひ申込時に免除を申請してください。

床上操作式クレーンのほうがまだの方は、こちらにまとめています。

天井クレーンの資格は5トンで分かれる|床上操作式クレーン運転技能講習を元人事が解説

合図1時間だけ免除される人もいます

もうひとつ、範囲の狭い免除があります。

つり上げ荷重5トン未満のクレーンの運転業務や、1トン未満の玉掛け業務などに6か月以上従事した経験がある方は、「運転のための合図」1時間が免除されます。

ここは条件の読み方に注意が必要です。資格を持っているだけでは対象になりません。その業務に6か月以上従事した経験が要ります。証明書類を求められるので、申込前に受講先へ確認してください。

クレーンとセットで取る「合併講習」もあります

まだ何も持っていない方には、こちらの選択肢があります。

玉掛け技能講習とクレーン運転特別教育を、3日間でまとめて修了するコースを用意している機関があります。合併講習、併合講習などと呼ばれています。

別々に受けると休みが5日分必要ですが、まとめれば3日で両方そろいます。費用は3万円前後になりますが、休みを取る負担を考えると悪くありません。

クレーンの特別教育がどこまでの作業をカバーするのかは、こちらで書いています。

クレーンの特別教育とは?5トン未満の範囲と社内実施の落とし穴を解説

費用は2万円台から。免除の有無で変わります

公表されている金額を並べます。

コース日数受講料の例
免除なしの通常講習3日22,800円
時間短縮(免除あり)3日16,980円〜18,980円
日数短縮(免除あり)2日19,980円〜22,800円
合併講習(クレーン特別教育とセット)3日28,960円〜36,780円

全国的には2万円から4万円の幅に収まります。免除ありでも日数短縮を選ぶと料金が下がりきらないことがあるので、「安さ」と「休みの少なさ」のどちらを取るかで選んでください。

会場は厚生労働省の「登録教習機関一覧」から都道府県を選ぶと確実です。修了証は全国で通用するので、日程が合わなければ隣の県で受けても構いません。

天井クレーン

【人事視点】クレーンだけだと、配属が限られます

ここからは採用する側の話です。

私が見てきた範囲では、応募者の多くはクレーンと玉掛けを両方持っています。この2つはセットで扱われていて、片方だけという人は少数派です。無資格の方も珍しくはありませんが、両方持っている人が標準だと思ってください。

そして実務では、クレーンだけあって玉掛けが無い人は、出荷工程に回ることになります。

吊る操作はできても、荷にワイヤーを掛ける作業ができないからです。1人で完結しません。配置する側から見ると、必ず誰かと組ませる必要が出てきます。

逆に言えば、2つそろって初めて「1人で任せられる人」になります。玉掛けを単独で見ると地味な資格ですが、そういう意味を持っています。

もうひとつ、配属の実態をお伝えしておきます。応募の時点で無資格の方はいますが、配属はまた別の話です。

無資格の人を物流に配属することはありません。希望があれば聞きますが、求人をかけて有資格者が来たら、そちらが優先になります。

つまり玉掛けは、その工程に入るための最低条件だということです。持っていない状態で希望を出しても、順番は後ろになります。

そのうえで、40代・50代の方に伝えておきたいことがあります。

この資格を持った中高年の応募者は、大歓迎でした。

正直に書くと、物流は資格だけでなく、実務が他の業務よりきついところがあります。季節の寒暖差もありますし、重量物も扱います。ここを知らずに入ると続きません。

だからこそ、一通り経験してきた年配の方は「ずっと働いてくれる」という印象になります。若い人より歓迎される場面が、確かにあります。

ちなみに、玉掛けだけを持っていてクレーンが無いという応募者には出会いませんでした。経験者はたいてい、クレーンかフォークリフトも一緒に持っています。

【現場視点】出荷工程と、玉掛けが要る場面

実際の現場でどう使われているかです。

私がいる現場でいうと、原料や機材の搬入で必要になります。上流の工程ほど、扱う機材の重量が重くなるからです。

出荷工程に回されたら、そこで終わりなのか

気になる方が多いと思うので、書いておきます。

半期に一度は面談があります。その場で希望を申し出れば、通ることが多いです。

工場は離職率が高い職場です。だから会社の側も、合う仕事に異動させて長く働いてもらいたいと考えています。希望を出すこと自体が不利になることは、まずありません。

ひとりで任されるまでの流れ

資格を取っても、いきなり現場に放り込まれるわけではありません。

一般的な流れは、入社後に座学3〜4日 → OJTで3〜4か月です。

そして意外に思われるかもしれませんが、玉掛けは1人でやる仕事ではありません。クレーンやフォークリフトを動かす人がいて、上長がいます。合図とコミュニケーションが仕事の中身です。

体力は確かに必要です。動くのが好きな人に向いています。逆に、座ってじっとしている仕事が合わなかったという方には、悪くない選択肢だと思います。

落ちることはあるのか

実技試験があるぶん、有機溶剤などの座学だけの講習とは事情が違います。

全国の合格率は公表されていません。ただ、落ちる人が実際にいるのは確かです。学科の力学と質量目測でつまずく人、実技の合図で固まる人。理由はだいたい決まっています。

この話は分量があるので、別記事にまとめます。公開したらここからリンクします。

資格を持ったうえで工場を探すなら、まず派遣会社選びからです。年齢で弾かれない会社の見分け方はこちらです。

【元人事が選ぶ】40代・50代向け工場派遣会社の選び方とおすすめ|年齢で損しない探し方

まとめ

  • 境目はつり上げ荷重1トン。荷物の重さではなく設備のほうで決まります
  • 通常は3日間・19時間。学科12時間+実技7時間です
  • 学科と実技の2つに修了試験があります。座学だけの講習とはここが違います
  • 床上操作式クレーンなどを持っていれば力学3時間+合図1時間が免除。2日間になります
  • 合図だけの免除は6か月以上の実務経験が条件。資格だけでは対象外です
  • 費用は2万円〜4万円。クレーンとセットの合併講習なら3日で両方取れます
  • 実技は10人以内。枠が埋まりやすいので1〜2か月先を見て動く

出典:玉掛け技能講習規程(昭和47年労働省告示第119号。令和8年厚生労働省告示第44号による改正を含む)/クレーン等安全規則/労働安全衛生規則第36条/各登録教習機関の公表資料

受講料・日程・免除の取り扱いは、教習機関や年度によって変わります。記事中の金額は執筆時点で各機関が公表していたものです。免除の可否は申込時に決まり、当日の申し出は受け付けない機関が多いため、必ず事前にご確認ください。

クレーンを持っている方にとって、玉掛けは2日と2万円で「1人で任せられる人」になれる資格です。工場で長く働くつもりなら、早い段階でそろえておいて損はありません。

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この記事を書いた人

40代後半で、まったくの異業種から工場派遣として製造業へ。梱包から機械オペレーターを経て正社員に転籍し、総務人事として採用を担当。現在は請負業務の改善部門で、複数の拠点をまわって現場管理者の指導や、安全・品質の動画教材づくりを行う。「派遣として働く側」「採用する側」「現場を回す側」の3つの視点から、工場の仕事と中高年のキャリアについて、きれいごとなしの本音を発信しています。いま働いているのは、半導体や電子機器に使われるフィルムをつくる現場です。

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