「玉掛けって落ちることあるのかな」
「学科試験が不安なんだけど、どのくらい取れば受かるんだろう」
先に結論をお伝えします。ほとんどの方は受かります。ただし落ちるとしたら、危ないのは学科ではなく実技のほうです。
学科試験を心配して検索する方が多いのですが、学科は追試を用意している機関が多いのに対して、実技は本番が1回きりです。この記事では合格基準を整理したうえで、どこでつまずくのかを具体的に書きます。
私は40代後半で、まったくの異業種から工場派遣として製造業に入りました。その後、正社員に転籍し、総務人事として採用を担当し、いまは業務改善で現場管理者の指導をしています。いま働いているのは、半導体や電子機器に使われるフィルムをつくる現場です。
合格率は公表されていません
まず前提を正確にしておきます。
玉掛け技能講習は都道府県労働局長の登録を受けた教習機関がそれぞれ開催しています。全国の合格率という統計は公表されていません。
よく見かける「合格率90パーセント以上」は、個々の教習機関が案内として示している数字です。おおむねその通りではあるのですが、残りの数パーセントは確実に存在します。
学科と実技で、採点の仕組みが逆です
ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。
学科は0点から積み上げて合格ラインを超える試験です。実技は満点からミスのぶんを引かれていく試験です。
この違いが効いてきます。学科は落としても取り返せる場面がありますが、実技は取り返せません。
学科試験:合計60点以上、かつ各科目40%以上
学科試験の合格基準は2段構えです。
- 全科目の合計が60点以上であること
- かつ、各科目でそれぞれ40パーセント以上取れていること
合計で60点あっても、1科目でも4割を切ったら不合格です。
出題されるのは、学科講習で受けた4科目です。
| 科目 | 講習時間 | 中身 |
|---|---|---|
| クレーン等に関する知識 | 1時間 | 種類・構造・安全装置 |
| 玉掛けに必要な力学 | 3時間 | 力の合成と分解、モーメント、重心、質量、荷重、玉掛用具の強さ |
| クレーン等の玉掛けの方法 | 7時間 | 用具の選定、基本動作、合図 |
| 関係法令 | 1時間 | 安衛法・安衛則・クレーン等安全規則 |
検索でよく見かける「計算問題」は、2つめの力学です。ここが4割を切ると、他が満点でも落ちます。
出題形式は機関によって違います
ここは正直に書いておきます。
調べてみると、「4択だった」「3択だった」「玉掛けは4択で法令は2択だった」と、体験談によってバラバラでした。告示に形式の定めがないため、機関ごとの運営に委ねられています。
共通しているのはマークシート方式であることと、問題文が短いことです。「4択の対策をしておけば大丈夫」と書いてある情報を、そのまま信じないでください。
出るのは「メモしてください」と言われた場所です
講師は講習中に「ここはメモしてください」「試験に出ます」と言います。出題はそこからです。
過去問アプリを探している方が多いのですが、過去問は公開されていません。市販の問題集やアプリは有志が作った予想問題です。使うのは構いませんが、講義中のメモに勝る対策はありません。
【本題】落ちるのは実技のほうです
ここからが本題です。
実技試験は4つの項目で構成されていて、グループ単位で行われます。
1. 質量目測は「目分量」ではありません
これがいちばん誤解されています。
質量目測は勘で当てるものではなく、寸法を見て体積を出し、材質の比重を掛けて計算するものです。学科でやった力学が、そのまま実技に出てきます。
講習中に講師が何度かヒントを出します。そこを聞き逃した人が、当日いきなり困ります。
2. 合図は「間違える」より「危ない」が怖い
合図を1つ間違えるだけなら減点で済みます。しかし危険につながる合図や指示を出した場合は、その場で不合格になることがあります。
吊り荷の下に人がいるのに巻き上げの合図を出す、といった行為です。点数の話ではなくなります。
合図は覚える量が多いので、「実技が覚えられない」と検索する方が多いのはここです。ただ、丸暗記しようとするから苦しくなります。動作には全部意味があるので、意味とセットで覚えると残ります。
3. 最初の指差し確認を飛ばす
意外に多いのがこれです。
玉掛けを始める前に、吊り荷を指差して質量と重心位置を確認するという動作があります。いちばん最初なので、緊張していると飛ばしてしまう。これが大きな減点になります。
実技は手順が採点対象です。速くやる必要はありません。一つひとつの確認動作を省かないこと。これに尽きます。

落ちたらどうなるのか
学科は、その場で追試がある機関が多い
学科で基準に届かなかった場合、その場で居残って再試験という運用をしている機関が多いようです。「受かるまで受けさせてくれる」という体験談もあります。
ただしこれは機関ごとの運用で、決まりではありません。後日あらためて追試という機関も、期限を設けている機関もあります。
実技は、講習から受け直しになることがあります
実技で不合格になると、次はイチから受け直し、受講料も全額払い直しという機関があります。
玉掛けの受講料は2万円から4万円です。もう一度払うとなると、金額として無視できません。申し込む前に「不合格だった場合はどうなりますか」と確認しておいてください。
「不合格通知」は届くのか
これを調べている方も多いので書いておきます。
後日、郵送で通知が来るという形ではありません。実技試験は最終日の最後にあり、その場で採点して、合格者に当日修了証を交付する機関が多数です。結果はその日のうちに分かります。
【現場視点】私が送り出した範囲では、落ちた人はいません
ここからは、私が見てきた範囲の話です。
ここまで実技の怖さを書いてきましたが、正直に言うと、私が人事だったときに、社内から玉掛けの講習に行かせて落ちた人はいませんでした。ほとんど受かる、というのが実感です。身構えすぎる必要はありません。
ただ、講習中の様子には差が出ます。座学では寝る人がいます。寝たこと自体が落ちる原因になるわけではないのですが、そういう方は学科のときに苦労しています。
合図やコミュニケーションが苦手だという方もいます。ただ、苦手でも合図は必要になる場面が多いです。これが無いと危険だと身をもって知ることが多い現場でもあります。真剣に仕事に取り組むつもりなら、必要なものだと理解できると思います。
【人事視点】落ちても査定には響きません
会社の費用で行かせてもらった場合、いちばん気になるところだと思います。
不合格になって査定に響くということはありません。少なくとも私が見てきた範囲では、そういう扱いはしていませんでした。
費用のほうも、そこまで身構えなくて大丈夫です。会社の費用で行っている場合、再受講の費用は基本的に出ます。ただし三度目となると資格によって扱いが変わるので、上長への確認が必要になる場合があります。
配属を前提に行かせた人が落ちたときは、資格の必要のない部門への異動になります。ただし本人の希望も確認するので、無理な異動にはなりません。
他の会社のことは分かりませんが、実技のある資格で落ちる方はいても、人事がそれを気にすることはありませんでした。欠員が埋まらないなら別の人を募集するなど、次の行動に移ります。現場の人員を確保するのが仕事だからです。
落ちないために、当日やること
中高年から受けると、まわりが年下ばかりで気後れするかもしれません。ただ実技は速さを競うものではありません。慌てて手順を飛ばす若い人より、ゆっくり確実に確認する人のほうが点は残ります。
講習そのものの費用や日数、クレーン資格による免除については、こちらにまとめています。
玉掛け技能講習の費用と日数|クレーン資格で短縮できる仕組みを元人事が解説
クレーン側の資格がまだの方は、5トンで区分が分かれる仕組みから確認してください。
天井クレーンの資格は5トンで分かれる|床上操作式クレーン運転技能講習を元人事が解説
資格を持ったうえで工場を探すなら、まず派遣会社選びからです。
【元人事が選ぶ】40代・50代向け工場派遣会社の選び方とおすすめ|年齢で損しない探し方
まとめ
- 合格率は公表されていません。「90%以上」は教習機関が示す数字です
- 学科は合計60点以上、かつ各科目40%以上。力学で4割を切ると落ちます
- 出題形式は機関でバラバラ。4択とは限りません
- 過去問は公開されていません。出るのは「メモしてください」と言われた箇所です
- 実技は減点方式で本番1回。やり直しがきかないのはこちらです
- 質量目測は勘ではなく計算。合図は危険につながると一発で不合格も
- 実技で落ちると受講料を全額払い直しの機関があります。申込前に確認を
ほとんどの方は受かります。落ちるとしても、理由は決まっています。講義中のメモと、手順を飛ばさないこと。この2つだけです。中高年から工場でやっていくうえで、玉掛けは長く効く資格になります。

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