起業で失敗しないためには、何をおいてもお金のコントロールがうまく出来るかにかかってきます。
最初はうまくいって、儲かっているからといって急な拡大をすれば一気に資金繰りが悪化します。
また、逆にうまくいかなかったときに違う事業に手を出す場合も悪化する原因になります。
立ち上げてから半年は苦しい思いをしたという中小企業の起業家さんたちは口をそろえて言います。
その次は1年後そして3年後、何か聞いたことのある年数ですね。でも起業家の壁も丁度そのくらいにやってきます。
昔は情報が少なかったので何もかも手探りでしたが、今はこうやって記録に残して伝えることができます。この記事は業種が偏ってはいますが、自分の実体験と友人の実話がベースになっていますので、多少は力になれると思います。
目 次
起業するときの資金はどれくらい必要なのか?
理念と目標、何を売るかを聞くとすぐに答えられると思いますが、じゃあ一体お金をいくら準備すればスタートできるのか?と聞かれると答えられない人が多いと思います。そして、
「まあ半年間、自分が食べていけるだけの貯金と500万くらいの事業資金があれば何とかなるかな。」
と気軽に考えて始めると、そのお金が一瞬でなくなることに驚くはずです。そうならないためにも
まず支出を全て洗い出す
とにかく思いつく支出を全て洗い出します。登記、事務所経費、車両費、交通費、燃料費、通信費等々ありとあらゆる経費を書き出します。
もちろん自分の報酬も支出に含めます。
起業後は自分で出来ることは自分でする
洗い出しが終わったら、その支出で安くできるものや削減できるものを徹底的に行います。会社の登記は、すべて自分でやりましょう。司法書士に頼むと15万から20万くらいかかります。それを自分ですれば7万円くらいで収まるはずです。事務所経費も何もかも一番安いものを使いましょう。
そしていつ事業が黒字になるかシビアに売上計画を作成
この予測が一番難しいです。結局のところ売上計画は
努力目標以外の何者でもない
だから難しいのです。
しかし当面は黒字にするための売上高が計画に盛り込まれるはずです。
事業が黒字になるということは、粗利益から経費を差し引いた金額がプラスになるということです。
先ほどシビアに計算した経費がここで役立ちます。シビアといっても妄想ではいけません。経費は絶対に実現可能な数字にしてください。
経費が少なくなれば、黒字化は早くなります。3ヶ月くらいで帳簿上黒字化できるような売上計画ができることが望ましいです。
起業に必要な運転資金を求める
運転資金というのは仕入支払いと売上入金の時間差が生じる期間に最大の資金が必要になります。
分野によっては、締め日から支払いまでの期間(支払いサイト)が60日後なんてところもザラにあります。そうした場合、長期間の資金が必要になります。
支払いに関しては起業して間もない会社は取引先の言いなりですが、ダメもとでお願いするのも手です。たとえば
「支払いサイトですが45日にしていただけないでしょうか?」とか。
大抵は末締め翌月末払いがほとんどです。資金繰りを楽にするために、売上もできれば末締め末払いのところと取引すると資金繰りがかなり楽になるはずです。
得意先を絞って営業するときには、もちろん売上高の期待が最優先です。その次に支払いサイトを選ぶといいでしょう。
起業して間もないころは、なるべく資金を事業の運転にまわさなくてはいけません。なので経費は極力抑えて、早く現金化するということを頭に入れておく必要があります。
シビアに計算して運転資金がいくら必要か求めることができたら、その2倍~3倍の金額を運転資金に設定します。
起業する事務所はなるべく見栄を張らずに小さく始めること
はじめる前は、そんな見栄張ってどうするの?と思うかもしれませんが、意外にというか知らないうちに見栄を張るようになってしまいます。
なぜかというと、初めて事務所を選ぶとき、「少しでも良い立地」とか「OAフロアがいい」とか「新しい物件」についつい目移りしてしまいます。
長期間腰をすえて事業をするからとか、将来社員を採用するには駅から近いほうがいいとか、不動産屋さんも色々丁寧に余計なアドバイスをくれます。
少しだけお金を出せばいいところにいけるのですが、これが見栄の始まりになります。
「家賃10万のところ11万ならOAフロアがついてオフィス内がとても綺麗になります。」
こういわれたら貴方ならどうしますか?
1万くらいならいいかと思ったらもうすでに見栄の罠にはまっています。
良いところにいけば事務用品の机やOA機器も良いものをそろえないと様(サマ)にならないようになってきます。良いものをそろえると販促物を作るときも少し洒落たものになってきます。
こうしてどんどん積み重なって気がついたら経費が2倍近くかかっていたなんて人も多いです。かといってボロボロの事務所を選ぶ必要はありません。
最低限必要なものがそろっていて、小奇麗であれば最初のうちはそれで十分です。
売上と利益が○○万円出たら事務所を○○へ移転しようという目標にして、最初は質素な事務所にするべきです。
起業後、資金繰りは自分が思っているより相当大変になる
これは経験した人じゃないと中々わかりませんが、
事業開始から落ち着くまでは、とにかくお金のことばかり気になります。
資金にいくら余裕があっても不安が拭いきれません。
なぜなら、不確定要素が沢山ありすぎていつ急な資金が必要になるかもしれないと思って落ち着けないからです。
自分が立てた資金計画は半年で底をつく
計画立てても無意味に思えるかもしれませんが、そうではありません。自分の計画が頭の中だけで考えたものであって実際の結果とは大きな開きがあったということです。
見落としていた経費があったり、予想よりも売上が低かったり、とにかく自分にとって想定外の出費が後を絶ちません。
運転資金のところで計算した結果の2~3倍を実際の運転資金にする理由はここにあります。
これは経験がないというだけの問題ですので、3ヶ月くらいたてばもっと現実的な経費が見えてくるはずです。
そういう自覚が出来たなら、もう一度資金計画、売上計画を立てます。
変動費、特に販促費が足かせに
事業開始後、販促費、広告宣伝費がどんどん大きくなっていくことに気づくと思います。
売上をあげるために必要な活動ですが、お金を使えば売上が何とかなるといった考えに陥りやすいので注意が必要です。
本当にその販促は実を結ぶのか?
本当にその広告は効果があるのか?
「将来結果がでるかもしれない」は、絶対に結果がでないものとして切り捨てる。
そういった勇気も必要です。
売り上げが見込みより少ないときを考える
問題の本質は、売上が少なかったときにどうやって増やすかをあらかじめ考えておく必要があります。
長期の戦略は必要ありません。短期と中期で考えて売上を上げる計画を練り直す必要があります。
販売先、価格、商品内容、市場に受け入れられるかどうか再検討します。
起業後、最初の3年目に資金を悪化させるボスが突然やってくる
半年、1年と乗り切るとその後1年は何かぽっかり穴が開いたように暇ではなく楽になります。
売上が安定してくるとそれまでの忙しさが嘘のように穏やかになります。
しかし、順調に行くと必ず突然現れてくる3年目のボスがやってきます。
そのボスの名前は「消費税」
そうです、皆さんが普段払っている消費税です。創業から2年は免税事業者として消費税を支払う必要のない期間があります。
しかし、2期が終わって売上が1000万円を超えていたら、国から消費税払ってくださいといわれます。
今は8%ですが、これから起業する人は10%が確定です。
粗利から経費を引いた金額に10%かかります。これを3期目の決算月から2ヵ月後に支払わなくてはいけません。一括で。
単純に課税対象の金額が1000万だった場合10%の100万円を一括で用意しておかなくてはいけません。
売上に比例するので、今も中小企業では消費税のために銀行から借り入れするところもあるくらいです。
それだけ税金というのは重いものです。他にも法人事業税やら税金が迫ってくるので実際の支払いはもっと多くなります。
これが経験したことのない3年目のボスです。
簡易課税か原則課税かを選択できる場合は慎重に
特にサービス業は注意が必要です。簡易課税は、小売業は総売り上げの20%に対して消費税を支払いますが、サービス業だと50%が課税対象になります。
原則課税は通常の税金の計算になりますので、経費などを控除した金額に対して課税されます。
簡易課税から原則課税への変更は可能ですが、逆はできません。この辺は税理士と相談するほうが確実ですが、選択を間違えると何十万と損をすることがありますので慎重に決めてください。
簡易課税の申告は決算前までが期限ですのでそれも注意が必要です。
売上が1000万未満なら免税事業者ですので消費税の支払いは気にする必要はありません。
まとめ
まだまだ伝えきれないことも沢山ありますが、今回はここまでです。とにかく会社はお金とずっと向き合っている感覚です。サラリーマンのときは自分の与えられた仕事だけに専念できますが、起業家はお金のことを全てコントロールしたうえで、売上をあげていかなくてはいけません。慣れたら楽になりますが、1~2年はお金について知らないことが色々出てくると思ってください。
- 支払いは全て正確に把握する
- 自分でできることは自分でする
- 売上計画はシビアに作る
- 経費は抑えて売上は早く現金化
- 売上が思うように達成できなかったときの対策を考えておく
- 3年目は消費税に備える
起業後スグでも簡単にできる経費削減くらいはやっておきましょう
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